2006年6月 5日 (月)

『アンボス・ムンドス』

桐野夏生『アンボス・ムンドス』を読む。

装丁はかわいらしいけど中身は真っ黒。

この人、基本的に長編の方が合ってると思うけれど。

人間、特に女性の悪意を描かせたら、今右に出るものは

いないんじゃないかなぁ。

一番初めの「植林」と「毒童」は「自分の境遇を恨み、他人の幸せを

妬む」ことをの醜さとおぞましさが嫌というほど描かれている。

「ぱっとしない私」を肯定しすくい上げる系の小説はわりと

あると思うけれど、それをここまで露悪的に描いてしまうのは

やっぱりすごい。努力をしないで全てを他人のせいにし、

世の中を恨んで生きることほど醜いことはない、、と、ハッと

させられる部分もあったり。

表題作は小学生の悪意の罠にはまった教師の物語。

こちらも子供の、子供だからこその非情なまでの悪意の

空恐ろしさにぞっとさせられました。

小説家の娘に生まれた女を主人公にした「浮島の森」は

ちょっと雰囲気が違って、ちょっとレトロ感のある文壇系の話。

わりと好きです。

「好き」な小説では決してない。でも読む価値はある。

そんな一冊。

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2006年5月28日 (日)

『河岸忘日抄』

一度しか会ったことはないけれど、本選びの趣味がかなりよい友人に

紹介してもらった、堀江敏幸『河岸忘日抄』を読む。

http://www.amazon.co.jp/gp/product/4104471038/250-3240413-7825869?v=glance&n=465392

パリのセーヌ河と思しき河岸の停泊する船に暮らすことになった

主人公の男性の、ほぼ何も起こらないに等しい日々の様子を

綴った物語。

コーヒーを入れて、前に住んでいた住人の置いていったレコードを

聞いたり、古い本を読んだり、クレープを焼いたりしながら、

断片的に浮かび上がってくる様々な問題に対して自問自答する、、

という話。

これがかなりツボ。このこまごまとした生活の様子や、古い映画や

小説、昔聞いたちょっとしたエピソードが浮かんでは消えていく様子が

なんとも心地いい。

読んだら必ず、岸辺に停泊する船のデッキで煙草を吸いながら、

小説を読んで休暇を過ごしてみたくなる小説。

あぁ、でもこういうの、売れないんだろうなきっと。勿体無い。

静かで穏やかで久しぶりに心が落ち着く読書。

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